ジビエの硬く臭う肉質
公開日:2021.09.20 更新日:2021.10.01
ジビエの肉質
「ジビエのお肉は好きではない」とおっしゃられる方のほとんどが、「ジビエのお肉は硬く臭いが強い」ことをその理由にあげられます。
確かに、ジビエのお肉はとても硬い部位があったり、その動物がもつ独特の香りがあったりします。「軟らかくよい香りがする」と評判の雪国のジビエでも、高級な牛や豚などの畜産動物に比べたら、動物によってその傾向が少しございます。それがジビエ肉の良さだったりします。
なぜジビエのお肉は硬く香りがあるのでしょうか?
今回は、ジビエの硬く香りがある肉質についてお話したいと思います。
ジビエ肉の硬さ
ジビエ肉が硬いと感じる原因は、「ジビエは野生動物であること」と「日本人のお肉の好み」の2種類の理由があると考えられます。
野生動物ゆえの硬さ
ジビエは、人間に育てられていない野生の動物です。そのため、生きるためにエサを求め、野山を駆け回ります。駆け回ることによって、アスリートのような引き締まった筋肉質なカラダになります。
また、柔らかい霜降りのお肉になるように、人間によって配合されたエサを食べることはありません。家畜のエサに比べ、とってもヘルシーな木ノ実や野草、果物がジビエのエサとなります。
日本人のお肉の好み
「高級和牛」といわれたとき、日本人であればどんなお肉を想像するでしょうか? 赤身の間に細やかなサシ(霜降り)が入っていて、口の中に入れると溶けるほど軟らかい。そんなお肉を想像しませんでしょうか?
お魚でもそうです。例えばマグロの高級部位といえば、日本ではとろける軟らかさをもつ「トロ」ですが、欧米では「美味しくないとして」昔は捨てられていたほど。そう、日本人は霜降りの軟らかいお肉が大好きです。
日本人は柔らかいお肉を好む傾向にあります。そのため、ジビエのお肉を食べたとき「硬い」と感じやすいのです。肉食を中心とした狩り文化が盛んだった欧米では、かみごたえがあるお肉が好まれる傾向にあるため、逆にジビエ肉の硬さがとても魅力だったりもするそうです。
欧米人の食事時間はとてもゆっくりです。それゆえに、じっくりと噛みながら肉の味を楽しめるジビエ料理は人気なのかもしれませんね。
熊肉と穴熊肉鹿肉も
補足になりますが、「ジビエのお肉は硬く臭いが強い」とおっしゃられる方は、もしかしたら、とある猪肉だけを食べてそのような固定観念をもってしまっているのかもしれません。
ジビエは、猪肉だけではございませんし、育った環境によってその肉質は大きく左右されます。雪国の熊肉や穴熊肉は、高級和牛を超越するほど甘く柔らかいお肉です(鹿肉も十分柔らかいです)。ジビエのお肉について「硬い」や「臭う」というお考えをお持ちの方は、ぜひ一度当店の雪国ジビエをご賞味ください。
ジビエ肉の香り
ジビエのお肉が強い匂いをもつ原因は、大きく分けて2つあります。1つは「ジビエを捕獲した後の処理の仕方が悪いこと」、もう1つは「野生動物ゆえに匂いがある」ことです。ここでは後者である「野生動物ゆえに匂いがある」ことについてお話しします。ジビエ肉の処理の悪さについてはコチラで詳細を掲載しております。
繁殖や保身のため
動物には繁殖や保身のためなど、もともと匂いがあります。野生動物であるジビエは、安心安全に生活したり種を繁栄させるため強い匂いを持っています。食用に育てられている家畜は、去勢することによって匂いを少なくしていたりします。
食べ物からくる香り
さらに、ジビエが食べている食べ物(エサ)からくる匂いもあります。野生動物が食べている木ノ実や野草も、種の保身のためアク(えぐ味・渋味)をもっています[詳細]。そのため、アクの強いエサを食べている野生動物は、おのずと匂いも強くなります。雪国のジビエが美味しいと思えるのは、雪国の木ノ実や野草にはアクが少ないからだといわれております。
ジビエは野生動物であるがゆえに匂いがあります。捕獲や処理の悪さからその匂いを悪臭に変えてしまうことは問題外ですが、その匂いを個性として良い香りのまま維持できれば、豚や牛などの畜産肉では味わえないジビエ肉だけの醍醐味にもなりえます。
現代の日本人は、海外の人が異常と感じるほど無臭を好みます。そのため、食べ慣れていない野生動物の匂いに、特に敏感なのかもしれません。ジビエ肉が美味しくないかどうかは、本当のジビエ肉を食べた後で判断されることをお勧めします。前例にとらわれているだけで、もしかしたら人生で1つ損をしているかもしれませんね。
ジビエの中には稀に、香ばしい木ノ実だけを好んで食べたり、アクの全くない食べ物(エサ)しか食べないグルメな偏食ジビエがいます。グルメ家のジビエのお肉は、香ばしくすごく良い香りがするので、至高のご馳走です。
軟らかい部位と硬い部位
野生動物であるジビエは、家畜である牛や豚と比べ、筋肉質なカラダをもっています。そのため、野山を駆け回るためによく使われるアシやウデなどの部位は硬めです。
ただ、運動量が少ない部位は、寒い冬を乗り切らなければならない野生動物であるがゆえ脂肪が豊富で柔らかいですし、運動量の多い中で蓄えられている脂肪なのでその質感は非常に高くヘルシーです。
ジビエは、硬いからといって決して美味しくないわけではありません。料理の仕方をちょっと工夫するだけで硬い部位も柔らかくなりますし、「ジビエ肉は干し肉に近い感覚でじっくりと味わうものだ」と考え方を変えるだけでも、最高のご馳走に様変わりします。
以下に、ジビエの硬い部位と柔らかい部位を大別してみましたのでご参考にしていただければ幸いです。各部位の詳細についてはコチラをご覧ください。あくまでもジビエ肉についてです。豚肉や牛肉とは異なりますのでご了承ください。
▶︎ 硬い部位
肩(ウデ) > スネ > バラ > モモ
カレーやシチュー、煮込み料理やチャーシューにすると抜群に美味しいです。
▶︎ 柔らかい部位
ロース > ヒレ > 肩ロース > ランプ
焼肉やステーキ、鍋などのお料理に最適です。
どんなに硬い部位であっても、薄くスライスしたり、塩麹につけて2~3日間冷蔵保存すれば、焼肉としてもお召し上がりいただけるほど柔らかいお肉に変化します。
香りを活かしたお料理
適切な処理がなされていない臭い匂いのするジビエは論外ですが、キチンと処理がされていて強い香りがするジビエは、料理によってはそのお料理をとても引き立たせてくれます。
例えば、麻婆豆腐。麻婆豆腐に使うお肉は一般的には豚のミンチ肉ですが、東京で美味しいと大評判の麻婆豆腐を提供しているお店は、実は麻婆豆腐のお肉にイノシシ肉を使用しております。香りが強いお料理に負けない香りが強く少し硬めで存在感でるジビエ肉は、まさに麻婆豆腐にうってつけ。
そのほか、カレーやシチュー、ギョーザなどのお料理も、使用するお肉をジビエ肉に変えるだけで絶品料理に変化しますよ。
ジビエを使用したオススメのお料理レシピ集もご用意しております。ご家庭でのジビエ料理のご参考にしていただければ幸いです。